リクルートが人工知能研究所を開設した意味

リクルートが人工知能研究所を開設した意味

リクルートが人工知能研究所を設立したと発表した。実は、僕はこの件について比較的詳しく知っている。ただそれは取材として得た情報ではなく、同社社員である友人たちからオフレコ話として聞いた情報である。なのでその部分は記事にはしたくない。

リクルートが人工知能研究所を設立したと発表した。実は、僕はこの件について比較的詳しく知っている。ただそれは取材として得た情報ではなく、同社社員である友人たちからオフレコ話として聞いた情報である。なのでその部分は記事にはしたくない。

ただオフレコ情報を除いても、公開情報や周辺情報をベースにリクルートが目指している戦略は十分に推測可能だ。なのでオフレコ情報には触れずに、今回のリクルートの発表の意義を解説したい。

僕は今年の年明けころから、リクルートが人工知能の領域で活発に活動していることに気づき始めた。日本には人工知能の研究者が比較的多くいるのだが、その中でも最も元気のいい若手研究者たちが「全脳アーキテクチャ勉強会」という名前の勉強会を開催している。その会場として、リクルートがセミナールームを提供していたのだ。セミナールームを無料で提供することで若手研究者とのパイプもできるし、人工知能研究の最先端の情報も取得できるわけだ。

また昨年秋ごろから取材先の研究者たちに「日本で最も人工知能研究に力を入れている企業は」と質問すると、必ず「リクルート」という答えが返ってきた。ある研究者は「うちの学生の中でも優秀な連中がリクルートに就職しました。うちの大学と共同研究しようという話になっているけど、共同研究する必要がないくらい優秀な学生を抱えている」と語っていた。

そこでリクルートに取材を申し込んだ。取材に応じてくれたのはリクルート・メディア・テクノロジー・ラボの所長。ところが取材には、広報が同席。いろいろと角度を変えて質問したのだが、歯切れの悪い答えしか帰ってこない。回答は、どれも一般論に終始した。

こういう受け答えをする場合は、何かを隠していることが多い。しかもかなり重要なことを隠している。同社の今後の基幹戦略になるような話に違いない。直観的にそう思った。

そこで正面から取材するのではなく、友人関係という禁じ手を使って話を聞くことにした。ただしこうしたルートで得た情報は公開できない。友人関係のほうが大事だからだ。それでも話を聞きたかった。記事に書くということより、僕自身の興味のほうが勝ったわけだ。

ただ書けることは書こうと思う。それは、リクルートは本気だということだ。人工知能研究所開設の発表を受けて「株価対策ではないか」という穿った見方をソーシャルメディア上で見かけたが、そんなことはない。本気で、人工知能を企業戦略の中核にしようとしている。

リクルートはメディア企業である。メディアに関するテクノロジーが変化するたびに、古いテクノロジーの事業を潰して、新しいテクノロジーに乗り換えてきた。紙からネットへ。PCサイトからモバイルサイトへ。自分で自分の事業をディスラプト(破壊)してきたわけだ。

そして次に事業をディスラプトするテクノロジーは、人工知能である。彼らはそう考えたわけだし、もちろん僕もそれは正しい読みだと思う。

リクルートは人工知能こそが同社を飛躍させるキーテクノロジーだと確信したからこそ、日本の研究者の中心と結びつき、人工知能を専門に研究してきた学生たちを雇用しているわけだ。そして、その研究者とのつながりを、海外のトップレベルの研究者にまで広げた。それが今回の発表の意味するところだ。

人工知能技術を使って何をするのか。もちろんそれは、ありとあらゆるデータを人工知能に解析させてユーザーのニーズを把握し、一人ひとりのユーザーが最も必要としている情報やサービスを提供する、ということだ。

就職情報はもちろん、食や美容の嗜好、結婚など、ありとあらゆる情報をリクルートは既に持っている。今はそれらの情報は、そろぞれのサービスの中で完結している。横のつながりはない。しかしそうした情報を統合し人工知能に解析させることで、今まで見えていなかったユーザーの要望が見えてくる。それに応えることで他社では真似のできないサービスを作る。それがリクルートの考えていることだ。



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